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 今、問題となっている害虫 「コナジラミ」 (その1)

 農作物に被害を与えるコナジラミの種類

 日本には様々な植物に60数種のコナジラミ類が生息していますが、このうち、野菜に寄生して被害を与える種類は4種類です。スイカズラなどに寄生している在来のタバココナジラミが、トマト圃場に飛来してトマト黄化萎縮病を伝播し、1970年代に近畿地方を中心に、四国、中国地方で問題となったことがあり、最近でもたまに発生しています。この病原ウイルスはタバコ葉巻ウイルス(TLCV)です。この在来のタバココナジラミは極くまれにサツマイモ畑で多発し、すす病を発生させることがあります。

 1974年に、欧米で発生していたオンシツコナジラミが日本に侵入していることが確認されました。この年に全国調査が行われ、この時に、新たにイチゴ圃場で外来のイチゴコナジラミも発生しているのが確認されました。しかし、その後、イチゴコナジラミによる被害はほとんど問題となっていません。

 1989年に、日本にシルバーリーフコナジラミが侵入したことが確認されました。シルバーリーフコナジラミは、当初、米国フロリダ州でトマト果実に着色異常を起こしたり、カボチャの葉を白化させたりするタバココナジラミの新系統(あるいはタバココナジラミ・バイオタイプB)などと呼ばれていました。その後、米国の研究者ベロウズらが、この虫の性質を調べて、従来から米国のサツマイモ畑などに生息しているタバココナジラミ(タバココナジラミ・バイオタイプAともいう)とは別種とした方がよいということで、タバココナジラミ(学名:ベミシア・タバキ)とは別の学名ベミシア・アルゼンチフォリと命名し、英名はsilverleaf whitefly としました。和名のシルバーリーフコナジラミは英名に由来します。

 シルバーリーフコナジラミは、在来のタバココナジラミと異なり、トマトなどの施設園芸作物での増殖が旺盛で、トマト、メロン、ナスなどでは、本害虫の排泄物に生える黒色のすす病も発生します。また、上記のように、シルバーリーフコナジラミは、トマト果実の一部が赤くならず食味も低下する着色異常症や、カボチャ、フキ、ミツバなどの茎葉に白化症を引き起こします。一方、在来のタバココナジラミは、このような異常症を引き起こすことはありません。シルバーリーフコナジラミは、サツマイモ畑など露地植えの作物でも多発して、すす病を起こすことがあります。

 また、シルバーリーフコナジラミは、トマト黄化葉巻病ウイルス(TYLCV: Tomato Yellow Leaf Curl Virus)をトマトに伝搬し、南九州や四国の一部ではトマト生産に甚大な被害を及ぼし、栽培を脅かすほど流行しています。TYLCVには強毒系統と弱毒系統があり、前者は九州、四国など西南暖地を中心に流行し、次第に東進しています。後者は東海地方を中心に発生しています。

 ところで、2003年頃から、それまでシルバーリーフコナジラミでは被害があまり問題とならなかったシシトウやピーマンでコナジラミが多発し、果実の着色不良を起こす被害が、沖縄や南九州の一部で発生しました。これまでのシルバーリーフコナジラミの発生状況と異なるところがあり、九州沖縄農業研究センターや宮崎県等で、このコナジラミの遺伝子を調べたところ、地中海沿岸地域、米国、中国などで発生しているタバココナジラミ・バイオタイプQであることが分かりました。

 タバココナジラミ・バイオタイプQは、トマト果実の着色異常症やカボチャの葉を真っ白にする白化症を起こしにくいこと、TYLCVをシルバーリーフコナジラミと同様によく伝搬すること、ネオニコチノイド系殺虫剤のアドマイヤー、ダントツなどに薬剤抵抗性を発達させ、ラノーにも抵抗性を示すことが知られています。しかし、ネオニコチノイド系殺虫剤でもベストガード、スタークル、その他サンマイトなどには感受性であるとされています。

 タバココナジラミ・バイオタイプA、シルバーリーフコナジラミ(タバココナジラミ・バイオタイプB)およびタバココナジラミ・バイオタイプQの関係については、形態的にはほとんど見分けが付かないが、複数の種が含まれる「タバココナジラミ種複合体(species complex)」である可能性があります。今後、タバココナジラミ種複合体に幾つの種が独立の(隠蔽された、あるいは潜在した)種として含まれるのかを明らかにすることは、世界的に研究の焦点となっています。

 オンシツコナジラミ、イチゴコナジラミ、シルバーリーフコナジラミ、タバココナジラミ・バイオタイプQの判別については、ここをご覧下さい。 (MM)
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